退職を考えたとき、「退職給付金」という言葉を目にしたことはありませんか?

SNSや検索広告で「退職するともらえるお金がある」と知って気になっている方も多いはずです。
一方で、「本当に自分が対象になるの?」「具体的にいくらもらえるの?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、退職後に受け取れる可能性のある公的給付3制度(失業保険・傷病手当金・再就職手当)を中心に、退職給付金の全体像をわかりやすくお伝えします。

目次

  1. 結論 ― 退職給付金は「退職後にもらえるお金の総称」
  2. 退職給付金の全体像 ― 公的給付3制度を中心に整理
  3. 失業保険(雇用保険の基本手当)の受給条件と金額
  4. 傷病手当金の受給条件と金額
  5. 再就職手当の受給条件と金額
  6. 3制度を組み合わせると最大28ヶ月のサポートが可能
  7. 申請の流れ(時系列)
  8. 注意点・取りこぼしを防ぐ3つのチェック
  9. 自分で申請する vs 専門家サポートを使う
  10. よくある質問
  11. まとめ

1. 結論 ― 退職給付金は「退職後にもらえるお金の総称」

最初に結論からお伝えします。

退職給付金とは、退職後に受け取れる可能性のある公的給付やお金の総称です。

ただし「退職給付金」という名称の単独制度は、法律上は存在しません。失業保険・傷病手当金・再就職手当といった複数の制度を、まとめてこの呼び名で表現しているのが実態です。

つまり「退職給付金」とは、特定の制度名ではなく、複数の公的給付や企業からのお金をまとめて指す言葉なのです。

その中でも、退職を控えた方の生活に直接影響するのは次の3制度です。

  • 失業保険(雇用保険の基本手当)
  • 傷病手当金(健康保険)
  • 再就職手当(雇用保険)

本記事では、この公的給付3制度を中心に解説していきます。


2. 退職給付金の全体像 ― 公的給付3制度を中心に整理

退職給付金には大きく2つの分類があります

退職後にもらえるお金は、大きく次の2つに分けられます。

  • 企業から支給されるお金: 退職金(退職一時金・退職年金)、未払い賃金 など
  • 公的制度から支給されるお金: 雇用保険の各種給付、健康保険の傷病手当金 など

このうち、企業からの退職金は会社の就業規則によって定められるもので、すべての会社にあるとは限りません。

一方、公的制度からの給付は、条件を満たせば法律に基づいて受給できる仕組みです。

公的給付の中で特に重要な3制度

制度 制度の性格 主な対象 期間の目安
失業保険(基本手当) 雇用保険 退職後に求職活動中の方 90〜330日
傷病手当金 健康保険 病気やケガで働けない方 通算1年6ヶ月
再就職手当 雇用保険 失業保険受給中に早期再就職した方 一時金

これら3つの制度を正しく組み合わせて活用することで、退職後の生活を安定させながら、次のステップに進む準備が整えやすくなります。

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3. 失業保険(雇用保険の基本手当)の受給条件と金額

失業保険の基本

失業保険は、退職後に求職活動を行う方の生活を支える制度です。正式名称は「雇用保険の基本手当」といいます。

雇用保険に加入していた方が対象です。

なお、会社都合退職(特定受給資格者)や一部の特定理由離職者の方は、後述する給付制限期間がなく、7日間の待期期間が終わればすぐに受給対象となります。離職票が届いてから速やかにハローワークで手続きを進めましょう。

受給条件

区分 加入期間条件
自己都合退職(一般の離職者) 離職日以前2年間に被保険者期間が 通算12ヶ月以上
会社都合退職(特定受給資格者)/一部の特定理由離職者 離職日以前1年間に被保険者期間が 通算6ヶ月以上

加えて、ハローワークが定める「失業の状態」(働く意思と能力があるが職業に就けない)に該当している必要があります。

出典: 厚生労働省 基本手当について

金額の計算方法

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%・60〜64歳は45〜80%)
賃金日額 = 離職前6ヶ月間の賃金(賞与除く)合計 ÷ 180

賃金日額・基本手当日額には上限額・下限額があります(毎年8月に改定)。

給付日数(90〜330日)

被保険者期間・年齢・離職理由によって給付日数が変わります。

  • 一般の離職者: 90〜150日
  • 特定受給資格者・一部の特定理由離職者: 90〜330日(手厚い)
  • 就職困難者: 最大360日

詳細は ハローワーク 基本手当の所定給付日数 をご確認ください。

待期期間と給付制限(2025年4月改正後)

退職してから受給が始まるまでの期間が決まっています。

退職理由 待期 給付制限
会社都合・特定理由離職者 7日 なし
自己都合(一般) 7日 原則1ヶ月(2025年3月31日以前は2ヶ月)
自己都合(5年以内に3回目以降) 7日 3ヶ月

2025年4月施行の重要な改正: 自己都合退職でも、離職日前1年以内または離職後に教育訓練等を受講した場合、給付制限が解除され、7日の待期完了後すぐに受給できるようになりました。

出典: 厚生労働省 令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除されます


4. 傷病手当金の受給条件と金額

傷病手当金の基本

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない期間の生活を支える健康保険の制度です。

在職中に受給開始するのが基本ですが、条件を満たせば退職後も継続して受給できます。

受給条件(在職中)

次の4要件をすべて満たす必要があります。

  1. 業務外の病気・ケガで療養中
  2. 労務不能の状態
  3. 連続する3日間の待期完成後、4日目以降の労務不能日が対象
  4. 給与の支払いがない(または傷病手当金より少ない)

金額の計算方法

1日あたり = 標準報酬日額 × 2/3
標準報酬日額 = 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30

被保険者期間が12ヶ月未満の場合は、別の計算式が適用されます。

支給期間 ― 通算1年6ヶ月

支給開始日から通算して1年6ヶ月(18ヶ月)の範囲で支給されます(2022年1月1日から通算化)。

途中で復職して再休職した場合、復職期間は除いて、通算1年6ヶ月の枠内で支給されます。

退職後も継続給付するための2つの条件

退職後も傷病手当金を受け取り続けるには、次の2要件を満たす必要があります。

  1. 退職日(資格喪失日の前日)まで 継続して1年以上の被保険者期間 があること
  2. 退職日に労務不能の状態であること(退職日に出勤するとアウト

注意点として、退職後に1度でも「労務可能」と判断されると、以降の傷病手当金は支給されません。

出典: 協会けんぽ 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)


5. 再就職手当の受給条件と金額

再就職手当の基本

再就職手当は、失業保険の受給中に早期再就職した方への奨励金的な一時金です。

早く再就職が決まるほど、受け取れる金額が大きくなる仕組みです。

主な受給条件(8つの要件すべて)

  1. 7日間の待期期間満了後の就職または事業開始
  2. 支給残日数が所定給付日数の 3分の1以上 残っていること
  3. 離職前の事業主に再就職していないこと(密接関係事業主含む)
  4. 1年以上の継続勤務が見込まれる安定した職業
  5. 雇用保険の被保険者になる就職
  6. 過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受給していないこと
  7. 求職申込み前から内定していた会社でないこと
  8. 自己都合退職で給付制限期間中の場合、最初の1ヶ月はハローワーク等の紹介での就職

金額の計算方法

再就職手当 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率
給付率: 残日数が所定給付日数の 2/3 以上 → 70%
        残日数が所定給付日数の 1/3 以上2/3未満 → 60%

基本手当日額には上限額があります(令和8年7月31日までの額)。

出典: ハローワーク 再就職手当のご案内


6. 3制度を組み合わせると最大28ヶ月のサポートが可能

退職給付金の重要なポイントは、「3制度をご自身の状況に合わせて組み合わせる」ことにあります。

受給シナリオ(時系列イメージ)

[休職中・在職] → 傷病手当金(在職中)
        ↓
[退職]
        ↓
[退職後] → 傷病手当金 継続給付(最長 通算1年6ヶ月)
        ↓
[病気・ケガが回復]
        ↓
[失業保険 受給期間延長申請] → 失業保険 基本手当(最長 約11ヶ月)
        ↓
[再就職決定] → 再就職手当(残日数の60〜70%×日額)

「最大28ヶ月のサポート」の根拠

  • 傷病手当金(最長18ヶ月)+ 失業保険(最長 約10ヶ月) ≒ 約28ヶ月

※ すべての方が最大期間を受給できるわけではありません。
※ 受給期間や受給金額は、退職前の賃金・年齢・離職理由・健康保険の被保険者期間等により大きく異なります。
※ ご自身の状況に応じた受給見込みについては、お住まいの地域のハローワーク・健康保険組合等でご確認ください。

失業保険の受給期間延長制度(隠れた重要ポイント)

退職後すぐに働けない場合(病気・ケガ・出産・育児・介護等で30日以上働けないとき)、本来の受給期間1年に 最長3年延長して、合計最長4年まで受給期間を延長できます。

傷病手当金から失業保険への切り替え時には、この受給期間延長申請を忘れずに行うことが重要になります。


7. 申請の流れ(時系列)

退職前にやること

  • 離職票の発行依頼(退職予定日に合わせて)
  • 傷病手当金(受給中の場合)の手続き準備
  • 健康保険の切り替え検討(任意継続/国民健康保険/家族の扶養)

退職後の流れ(失業保険の場合)

  1. 離職票が届いたら、お住まいの地域のハローワークで失業保険の受給手続き
  2. 7日間の待期期間
  3. 自己都合の場合: 給付制限期間(原則1ヶ月、2025年4月以降)
  4. 4週間に1度の失業認定日にハローワークへ行き、求職活動の状況を報告
  5. 失業認定後、約1週間で振込

必要書類

  • 離職票1・2
  • マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
  • 写真2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の通帳

詳細は 厚生労働省 雇用保険受給資格者のしおり をご確認ください。


8. 注意点・取りこぼしを防ぐ2つのチェック

① 退職日に出勤すると、傷病手当金の継続給付が受けられなくなる

傷病手当金を退職後も継続して受け取るには、退職日に労務不能の状態であることが要件となります。

退職日に出勤すると条件を満たさず、退職後の傷病手当金を受け取れなくなる可能性があります。退職日の扱いは事前に会社ともしっかり確認しておきましょう。

② 失業保険の受給期間延長申請の期限を逃さない

退職後すぐに働けない場合は、退職後30日経過後にハローワークで受給期間延長申請が必要です。

これを忘れてしまうと、傷病手当金から失業保険へ切り替えるタイミングを逃すことになります。

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9. 自分で申請する vs 専門家サポートを使う

比較表

項目 自分で申請 専門家サポート
時間 平日のハローワーク来所+情報収集 LINEで都度案内
取りこぼしリスク 制度の組み合わせ・受給期間延長等を見落とす可能性 専門知識でサポート
費用 申請費用は無料(公的制度のため) サービス利用料あり(個別案内)
安心感 自己責任で完結 進め方が分からない不安を軽減

どちらを選ぶかは状況次第

  • 制度に詳しく時間に余裕がある方: 自分で申請でも十分対応可能
  • 健康面で不安があり、複数制度の組み合わせが必要な方: 専門家サポートを検討

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10. よくある質問

Q1. 退職給付金は法律で決まった制度ですか?

A. 「退職給付金」という名称の単独制度は、法律上存在しません。退職後にもらえるお金の総称として広く使われる呼び名です。本記事では、退職検討者の生活に影響の大きい公的給付3制度(失業保険・傷病手当金・再就職手当)を中心に解説しています。

Q2. 失業保険と傷病手当金は同時にもらえますか?

A. 同時受給はできません。傷病手当金は「働けない方」、失業保険は「働ける方」が対象で、要件が両立しないためです。
ただし、傷病手当金 → 病気回復 → 失業保険、という順番での受給は可能です。失業保険の受給期間延長申請を行えば、退職から最長4年まで受給期間を延長できます。

Q3. 自己都合退職と会社都合退職で何が違いますか?

A. 主な違いは次の3点です。

  • 給付制限の有無: 自己都合は原則1ヶ月、会社都合はなし
  • 給付日数: 会社都合の方が手厚い
  • 加入期間要件: 自己都合は12ヶ月、会社都合は6ヶ月

2025年4月以降、自己都合でも教育訓練を受講すれば給付制限が解除されます。

Q4. いくらもらえますか?

A. 個別性が高く、退職前の賃金・年齢・離職理由・被保険者期間等により大きく異なります。

失業保険の場合、離職前6ヶ月の賃金合計÷180×給付率(50〜80%)が日額の目安です。
傷病手当金の場合、標準報酬日額×2/3 が1日あたりの目安です。

ご自身のケースで受給見込みを把握したい場合は、お住まいの地域のハローワーク・健康保険組合等でご確認いただくか、LINEでご相談ください。

Q5. 退職金(企業からのお金)と失業保険は両方もらえますか?

A. 別の制度のため、条件を満たせば両方受給できます。退職金をもらっても失業保険が減額されることはありません。
ただし税法上の扱いは異なるため、確定申告の有無は別途ご確認ください。


11. まとめ

退職給付金について、5つのポイントで振り返ります。

  • 退職給付金は、退職後に受け取れる公的給付やお金の総称(法律上の単独制度ではない)
  • 公的給付の3制度(失業保険・傷病手当金・再就職手当)が、退職検討者には特に重要
  • 3制度をご自身の状況に合わせて組み合わせると、条件次第で最大28ヶ月のサポートも可能
  • 退職日に出勤すると傷病手当金の継続給付条件を満たせなくなる
  • 制度の詳細は、お住まいの地域のハローワーク・健康保険組合等にてご確認を

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ご留意事項

退職スマイルは社労士監修のもと、制度情報の提供と相談サポートを行うサービスです。

制度の詳細はお住まいの地域のハローワーク・健康保険組合・年金事務所等にてご確認ください。
本記事の内容は公開日(2026-05-07)時点の情報です。最新情報は公式ページをご参照ください。

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