「在職中に半年ほど傷病手当金を受給した。退職後はあと何ヶ月もらえるの?」
「通算1年6ヶ月って、退職をまたいでも続くの?」
傷病手当金は、退職後も 継続給付 として受け取り続けることができます。ただし、 通算1年6ヶ月 という総支給期間の上限は退職前後で共通です。在職中に受給した期間を引いた 残期間 が、退職後にもらえる月数の目安になります。
この記事では、通算1年6ヶ月のカウント方法、退職タイミングと残月数のケース別計算、注意点までを整理します。
1. 結論 ― 通算1年6ヶ月から在職中の受給日数を引く
最初に結論をお伝えします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給期間の上限 | 同一傷病で 支給開始日から通算1年6ヶ月(健康保険法2022年1月1日改正) |
| カウント対象 | 実際に傷病手当金が支給された日 の合計(出勤日・有給日・全額給与支払日はカウントしない) |
| 退職後の継続給付 | 在職中の残期間内であれば受給可能([退職後の継続給付の3条件]を満たすことが前提) |
| 退職後の残月数 | おおむね 1年6ヶ月 − 在職中の受給日数 ÷ 30 |
→ 例えば在職中に6ヶ月受給していた場合、退職後の残期間は 約1年(=18ヶ月−6ヶ月) です。
2. 通算1年6ヶ月の仕組み
2.1 改正前と改正後の違い
| 項目 | 改正前(〜2021/12/31) | 改正後(2022/1/1〜) |
|---|---|---|
| 支給期間の数え方 | 支給開始日から 暦日で1年6ヶ月 | 支給開始日から 通算1年6ヶ月 |
| 復職期間の扱い | 1年6ヶ月の暦に 含まれる(実質的に短縮) | 1年6ヶ月の暦に 含まれない(カウント停止) |
| 効果 | 復職と療養を繰り返すと早期に上限到達 | 復職して働いた期間は 後ろ倒し |
→ 改正後は 休んだ日(=支給を受けた日)の合計が1年6ヶ月分 に達するまで受給可能になりました。
2.2 カウントされる日・されない日
| 状態 | カウント |
|---|---|
| 傷病手当金が支給された日(労務不能・無給) | ✅ カウント対象 |
| 待期期間(最初の連続3日間) | ❌ 不支給のためカウント対象外 |
| 復職して出勤した日 | ❌ カウント対象外 |
| 有給休暇で給与満額支払の日 | ❌ 不支給のためカウント対象外 |
| 給与の一部支払で差額支給の日 | ✅ 差額支給日として 1日カウント |
3. 退職後の継続給付の前提条件
退職後も傷病手当金を受け取るには、 継続給付の3条件 を満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 被保険者期間 | 退職日(資格喪失日の前日)まで 継続して1年以上 の健康保険被保険者期間 |
| ② 退職日に労務不能 | 退職日に 就労不能の状態(退職日の出勤はNG・有給休暇取得はOK) |
| ③ 受給中または受給要件を満たしている | 退職前から傷病手当金を受給中、または受給要件を満たしている |
3条件のいずれかを欠くと、退職翌日から給付が停止されます。詳細は[退職後の継続給付の3条件]の記事を参照してください。
4. 退職後の残月数 ケース別シミュレーション
退職時点の受給日数別に、退職後にもらえる月数を試算します(通算1年6ヶ月=約546日として計算)。
4.1 在職中の受給期間別の残期間
| 在職中の受給期間 | 残期間(退職後) | 月換算 |
|---|---|---|
| 0ヶ月(退職時から受給開始) | 約546日 | 約1年6ヶ月 |
| 3ヶ月(約90日) | 約456日 | 約1年3ヶ月 |
| 6ヶ月(約180日) | 約366日 | 約1年 |
| 9ヶ月(約270日) | 約276日 | 約9ヶ月 |
| 12ヶ月(約360日) | 約186日 | 約6ヶ月 |
| 1年5ヶ月(約510日) | 約36日 | 約1ヶ月 |
| 1年6ヶ月(約540日) | 約0日 | なし(上限到達) |
4.2 復職と療養を繰り返したケース
| 状況 | 計算 |
|---|---|
| 在職中6ヶ月(180日)受給 → 3ヶ月復職 → 退職 | 退職時点の受給累計180日 → 残期間 約12ヶ月(復職期間はカウントされず) |
| 在職中4ヶ月受給 → 2ヶ月復職 → 退職時に再度療養 | 受給累計約120日 → 退職後 約14ヶ月 |
| 在職中1年受給 → 退職時に労務不能継続 | 受給累計約360日 → 退職後 約6ヶ月 |
4.3 月給40万円・受給期間別の総支給額目安
| 在職中の受給期間 | 退職後の残月数 | 月額(標準報酬月額40万円ベース・約27万円/月) | 退職後の総支給額目安 |
|---|---|---|---|
| 0ヶ月 | 約18ヶ月 | 約27万円 | 約486万円 |
| 6ヶ月 | 約12ヶ月 | 約27万円 | 約324万円 |
| 12ヶ月 | 約6ヶ月 | 約27万円 | 約162万円 |
標準報酬月額40万円の場合、傷病手当金は1日あたり約8,889円(40万円÷30×2/3)、月額換算で約26万7,000円が目安です。月額計算の詳細は[傷病手当金の計算方法]の記事を参照してください。
5. 残期間を最大化するための注意点
5.1 退職日に出勤しない
退職日に 1時間でも出勤 すると、「退職日に労務可能だった」と判断され、継続給付の権利を失います。最後の挨拶や事務処理を兼ねた立ち寄りも避けるのが安全です。
退職日が 有給休暇 または 休職 の場合は、労務不能の状態が維持されたとみなされます。
5.2 同一傷病と別傷病の区別
| 傷病の関係 | 取り扱い |
|---|---|
| 同一傷病で再発 | 通算1年6ヶ月の 継続カウント |
| 治癒後の別傷病 | 新たな1年6ヶ月(ただし退職後は別傷病の継続給付不可) |
| 関連性のある別傷病 | 医師の判断による |
退職後に発生した別傷病については、原則として傷病手当金の対象外です(任意継続被保険者でも同様)。
5.3 受給期間中の収入
| 収入 | 影響 |
|---|---|
| 失業保険(基本手当)の同時受給 | 不可(傷病手当金は労務不能、失業保険は労働可能が前提) |
| 副業・アルバイト | 労務不能の認定に影響、原則 不可 |
| 不動産収入・配当等の不労所得 | 影響なし |
傷病手当金から失業保険への切替は、傷病手当金終了後または[受給期間延長申請]を利用する形で行います。
6. 申請手続き(退職後)
6.1 申請の窓口
| 健保 | 申請窓口 |
|---|---|
| 全国健康保険協会(協会けんぽ) | 退職時の協会けんぽ支部(住所地ではなく事業所所在地) |
| 健康保険組合 | 退職時の所属健保組合 |
| 任意継続被保険者 | 加入中の健保(新規発症は対象外) |
6.2 必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 傷病手当金支給申請書 | 健保所定の様式 |
| 医師の意見書(療養担当記入欄) | 労務不能の証明 |
| 事業主の証明(退職前の期間分) | 退職後の期間分は不要 |
| 給与明細・出勤簿のコピー | 退職前期間の参考資料として求められる場合あり |
6.3 申請のタイミング
| 申請単位 | タイミング |
|---|---|
| 月単位 | 1ヶ月分まとめて、月末を過ぎてから申請(多くの健保で推奨) |
| 退職後の継続給付 | 退職後の最初の受給期間分から、退職前と同じ健保へ提出 |
| 時効 | 各支給対象日の翌日から 2年 で時効消滅 |
7. よくある質問
Q1. 在職中に1年受給しています。退職後に転職しても継続できますか?
A. 同一傷病であれば、転職後の新しい健保でも 同一の通算1年6ヶ月の残期間内 で受給可能です。ただし、転職先で被保険者期間が 1年未満 の場合、退職→再退職の継続給付要件を満たさなくなる点に注意が必要です。
Q2. 退職後に病状が悪化して別傷病になりました。受給は続けられますか?
A. 同一傷病の継続 と判断されれば、残期間内で受給を続けられます。判断は 医師の意見書 を基にした健保の審査で行われます。関連性のない別傷病は、退職後は原則対象外です。
Q3. 任意継続被保険者になれば、別傷病の傷病手当金も受け取れますか?
A. 受け取れません。任意継続被保険者は、在職中から継続して受給している傷病の 継続給付 のみが対象で、 新規発症の傷病手当金は対象外 です。
Q4. 1年6ヶ月を超えても症状が続いている場合、何か支援はありますか?
A. 通算1年6ヶ月で傷病手当金の支給は終了します。その後の選択肢として、 障害年金(一定の障害状態の場合)、 生活保護、 失業保険の受給期間延長(労務可能になった時点で)などがあります。詳細は[傷病手当金から失業保険への切替]の記事を参照してください。
Q5. 復職と療養を3回繰り返しました。残期間はどう計算しますか?
A. 支給を受けた日(休んだ日)の合計 が1年6ヶ月(約546日)に達するまでが上限です。復職期間は累計から除外されるため、休職期間のみを足して計算してください。
Q6. 退職金や年金は傷病手当金の額に影響しますか?
A. 退職金 は影響しません。 老齢厚生年金 を受給している場合は、年金額が傷病手当金の額より少ない場合に 差額のみ支給 されます。
Q7. 月の途中で退職した場合、退職月の傷病手当金はどう計算されますか?
A. 退職日まで(退職日含む)の労務不能日数分が在職中の継続給付として、退職翌日以降は 退職後の継続給付 として計算されます。日数で按分されるため、月またぎで支給額が異なる場合があります。
8. まとめ
傷病手当金の退職後の支給期間について、要点をまとめます。
- 支給期間の上限は 同一傷病で通算1年6ヶ月(2022年1月改正で通算化)
- 退職後の残月数 = 1年6ヶ月 − 在職中の受給期間
- 退職後の継続給付には 被保険者期間1年以上・退職日に労務不能・受給中 の3条件が必要
- 退職日に 出勤すると権利を失う(有給・休職はOK)
- 復職期間はカウントされず、休職期間のみが累計対象
- 退職後の 別傷病 は原則対象外(任意継続も含む)
- 失業保険との 同時受給は不可、切替は受給期間延長申請で対応
- 申請の時効は支給対象日翌日から 2年
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