「傷病手当金を申請したのに、不支給通知が届いた」
「審査の結果に納得できない。やり直しはできるの?」

傷病手当金の申請が不支給(拒否)になった場合、 追加書類の提出 で再審査されるケースが多くあります。それでも結論が変わらないときは、 社会保険審査官への審査請求 という法的な不服申立て制度を利用できます。

この記事では、不支給の主な理由と、健保への問い合わせから法的な異議申立てまでの手順を整理します。

1. 結論 ― まずは不支給理由を確認し、追加書類で再審査

最初に結論をお伝えします。

ステップ 内容
① 不支給通知の理由を確認 健保からの 不支給決定通知書 に理由が記載されている
② 健保(給付課)に問い合わせ 不足書類・追加で必要な証明を確認
③ 追加書類を提出 医師の補足意見書・賃金台帳のコピー等で再申請
④ 社会保険審査官への審査請求 処分を知った日から 3ヶ月以内 に書面で請求
⑤ 社会保険審査会への再審査請求 審査官の決定を知った日から 2ヶ月以内
⑥ 行政訴訟 再審査の決定後、6ヶ月以内に地裁へ提訴

→ いきなり審査請求に進まず、 追加書類で再審査 から始めるのが現実的です。


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2. 不支給の主な理由

健保が不支給と判断する理由は、主に次の8パターンです。

2.1 労務不能と認められない

状況 健保の判断
医師の意見書だけで具体的な業務内容との整合性が見えない 「業務遂行が可能」と判定される
軽い症状で日常生活が普通に送れている 同上
自営業を続けている 労務可能とみなされる

2.2 待期期間(連続3日)が成立していない

状況 健保の判断
3日連続で休んでいない(途中に出勤日がある) 待期不成立 → 不支給
待期中の3日間のどこかで給与が支給されている 待期成立。ただし、不支給期間は給与日のみ

2.3 給与が支給されている

状況 健保の判断
休業期間中に給与満額が支給 不支給
給与が傷病手当金より少額 差額のみ 支給
有給休暇取得 給与満額支給扱いで不支給

2.4 業務上の傷病

状況 取り扱い
業務上のケガ・通勤災害 健保の傷病手当金は対象外 → 労災保険 で休業補償給付
業務外と業務上の判断が紛糾 労基署への労災申請が並行する場合あり

2.5 申請書類の不備

不備例 影響
医師の意見書の労務不能期間が空欄 審査保留
事業主の証明が不足 同上
申請期間と意見書の期間が不一致 同上

2.6 被保険者期間の不足(退職後の継続給付)

状況 取り扱い
退職日まで継続して 1年未満 の被保険者期間 退職後の継続給付不可
退職日に出勤した 同上

2.7 退職前から労務不能でなかった

退職後の継続給付では、 退職時点で受給中または受給要件を満たしている ことが要件。退職時点で労務可能だった場合、退職後に発症した傷病は対象外です。

2.8 同一傷病の通算1年6ヶ月を超過

通算1年6ヶ月の上限に達した場合、同一傷病の再申請は対象外です。詳細は[傷病手当金は退職後 何ヶ月もらえる?]の記事を参照してください。

3. ステップ① 不支給通知の確認

3.1 不支給決定通知書の見方

健保から送付される通知書には次の情報が記載されています。

項目 内容
不支給期間 不支給と判断された期間
不支給の理由 主な根拠
不服申立てに関する教示 審査請求の宛先と期限

通知書はそのまま保管し、後の審査請求の証拠書類として使います。

3.2 健保への問い合わせ

連絡先 内容
協会けんぽ 都道府県支部の給付課
健保組合 加入中の組合の給付担当
確認内容 不支給の具体的根拠、追加書類で再審査が可能か

4. ステップ② 追加書類で再審査

4.1 労務不能の証明強化

追加書類 内容
医師の補足意見書 具体的な業務内容との対比、症状の重さ、就労困難な根拠
通院記録・診療明細 通院頻度・治療内容の客観的証拠
服薬記録 薬剤の影響での業務遂行困難
業務内容書 事業主からの業務内容証明(重作業・運転等)

4.2 給与不支給の証明

追加書類 内容
賃金台帳のコピー 当該月の給与不支給または減額の証拠
給与明細 同上
事業主の補足証明 給与体系の説明

4.3 待期期間の整理

追加書類 内容
出勤簿のコピー 連続3日の休業を示す
タイムカード 同上

5. ステップ③ 社会保険審査官への審査請求

5.1 審査請求の概要

項目 内容
制度根拠 健康保険法第189条
請求先 各地方厚生(支)局の 社会保険審査官
期限 処分があったことを知った日の 翌日から3ヶ月以内
形式 書面(審査請求書)
費用 無料
弁護士・社労士の代理 可能(任意)

5.2 審査請求書の主な記載事項

項目 内容
請求人の氏名・住所 本人または代理人
処分の内容 不支給決定の概要
処分があったことを知った日 通知書受領日
審査請求の趣旨 「不支給処分の取消しを求める」等
審査請求の理由 具体的な反論
提出年月日・署名 必須

5.3 審査の流れ

請求書提出
  ↓
受理通知(請求人へ)
  ↓
原処分庁(健保)から弁明書提出
  ↓
請求人から反論書提出(任意)
  ↓
社会保険審査官の口頭審査(必要に応じて)
  ↓
決定(数ヶ月後)

審査は 書面審理が中心 で、口頭審査は限定的です。決定までの期間は おおむね6ヶ月〜1年


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6. ステップ④ 社会保険審査会への再審査請求

審査官の決定に不服がある場合は、 社会保険審査会 への再審査請求が可能です。

項目 内容
請求先 厚生労働省の 社会保険審査会(東京)
期限 審査官の決定を知った日の 翌日から2ヶ月以内
形式 書面(再審査請求書)
公開審理 原則として公開審理(弁論あり)
費用 無料

6.1 公開審理の概要

項目 内容
開催地 東京(霞が関の厚生労働省)
出席 請求人・代理人・原処分庁担当者・委員
弁論 双方の主張を口頭で陳述
議決 委員の合議で決定

7. ステップ⑤ 行政訴訟

再審査の決定にも不服がある場合は、 地方裁判所 への行政訴訟が可能です。

項目 内容
訴訟提起 再審査決定を知った日の翌日から 6ヶ月以内
訴訟費用 訴訟印紙代・弁護士費用
主張 不支給処分の取消しを求める
審理 通常の民事訴訟手続

訴訟は費用と時間がかかるため、 審査官・審査会 の段階で解決を図るのが一般的です。

8. よくある質問

Q1. 不支給通知が届いてから何日以内に対応すべきですか?

A. 法律上の期限は 処分を知った日の翌日から3ヶ月以内 に審査請求。実務上は、まず通知書受領後すぐに健保へ電話で確認し、 1ヶ月以内 に追加書類で再申請するのが現実的です。

Q2. 審査請求は自分でやるべき?社労士・弁護士に依頼すべき?

A. 書類が複雑 または 金額が大きい ケースは社労士・弁護士への依頼を検討。シンプルな書類不備が原因の場合は、健保への追加書類提出で解決することが多いため、まず追加書類を試すのが現実的です。

Q3. 審査請求で過去の傷病手当金がさかのぼって支給されますか?

A. 審査官の判断で 処分が取消し となれば、原則として申請対象期間分の傷病手当金が支給されます。請求権の時効は2年(支給対象日翌日から)ですが、審査請求中は時効進行が止まる扱いです。

Q4. 医師が労務不能と書いてくれません。どうすればいい?

A. セカンドオピニオン を取って別の医師の意見書を取得する方法があります。意見書の費用は3,000〜5,000円程度が相場です。医師の判断と業務内容の整合性を補足する 業務内容書(事業主作成)の提出も有効です。

Q5. 通知書を紛失しました。審査請求はできますか?

A. 健保に 不支給決定通知書の再発行 を依頼できます。再発行された通知書の受領日を基準に 3ヶ月以内 に審査請求してください。

Q6. 健保が「労務可能」と判断する基準は何ですか?

A. 主に 医師の意見書の記載内容業務内容との整合性本人の生活状況 を総合的に判断します。具体的な基準は公表されておらず、 個別審査 の結果次第です。

Q7. 退職後の不支給に対しても審査請求はできますか?

A. はい、 退職後の継続給付の不支給 にも審査請求は可能です。請求先は 退職時に加入していた健保 を管轄する地方厚生局の審査官です。

Q8. 不支給後にすぐ再申請するのと、審査請求するのはどちらが先?

A. 不支給理由が書類不備など軽微 な場合は再申請が早道。 労務不能の判定など実質的な争点 がある場合は審査請求が適切です。健保への問い合わせで方向性を確認してから選択しましょう。

9. まとめ

傷病手当金の申請が拒否された場合の対応について、要点をまとめます。

  • 不支給通知の 理由欄を確認 → 健保(給付課)へ問い合わせが最初のステップ
  • 書類不備や追加証明で解決 するケースが多いため、まず追加書類で再申請
  • 実質的な争点がある場合は 社会保険審査官 へ審査請求(3ヶ月以内)
  • 審査官決定にも不服があれば 社会保険審査会 へ再審査請求(2ヶ月以内)
  • 最終手段は 行政訴訟(再審査決定から6ヶ月以内)
  • 審査請求中は 時効進行が停止
  • 医師の意見書の補強・事業主の業務内容書がカギ
  • 不支給理由は 労務不能否認・給与支給・待期不成立・書類不備・被保険者期間不足 が多い

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